今回のカディスの旅のテーマは、「マグロ、赤ワイン、レティント牛。カディスの赤い悦楽」。
その中でも最大のイベント、クロマグロ漁の最盛期の5月のカディスの漁港バルバテへの訪問レポートをお届けします!

スペインで捕れるマグロの種類は?

スペインでもいくつかの種類のマグロが流通していますが、最高級とされるのは、やはりこの大西洋クロマグロ、スペイン語でアトゥン・ロホ(赤いマグロ)でしょう。これは、基本的には日本人がホンマグロと呼ぶ太平洋クロマグロと同種、あるいはその亜種だと言われているもので、大西洋で捕れるクロマグロも日本で消費されています。
その他のマグロとしては、主に北スペインで採れるビンナガマグロがありますが、このビンナガマグロはスペイン語で一般的にBonito del Norte(北のカツオ)と呼ばれていて、これをマグロだと認識していないスペイン人も多いのでちょっとややこしいのです。ちなみに、ソウダガツオや本ガツオも同じ南スペイン沿岸で獲られていますが、マグロほど一般的ではないようです。

少し前までは、マグロはソテーにしたり、マルミタコのような煮込み料理として食べられていましたが、スペインでも最近の日本食ブームに従って、刺身、タタキ、タルタル、寿司など、生のまま食べるのも、一般的になってきています。

マグロの解体

まずは朝一番で訪れたのは、マグロの業者PETACA CHICO。
カディス沖での天然マグロの漁から、解体、冷凍まで行うクロマグロのエキスパートで、今回はスペイン式のマグロの解体と漁を見学しに訪問しました。
バルバテで水揚げされた最初のクロマグロ180Kg。日本でもよく「マグロの解体ショー」をみかけますが、まず大きさがまったく異なります。全長二メートルほとあると思われる巨大な魚を、二人掛かりであっという間に20の部位に解体する様子を見せてもらいました。
最後に中落ち部分をスプーンですくって味見させてもらいましたが、さすが近海でとれたての天然本マグロ!醤油とわさびを持参しなかったことを後悔する美味しさでした。

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伝統の定置網アルマドラバ漁

そして、いよいよマグロ漁船への乗船です。
カディスやアンダルシア周辺では、アルマドラバと呼ばれる定置網漁で長年マグロ漁が行われています。
この漁法は、フェニキアの時代から行われていたもので、昔は村中総出で網を浜まで引き上げていたそうですが、現在では、バルバテ港から沖合へ数キロのところへ網を設置し、そこへ船を出します。

実はこの前に早めの昼食を済ませていた私たちは、船酔いするかもと戦々恐々。
酔い止めの錠剤が回ってきていましたが、私は多分大丈夫!(だって、昼食のワインも少しは飲みたいし)と薬は飲まずに船に乗り込みました。

船が走っている間はそこそこ安定しているものの、実際に漁の場について船が止まると、波の揺れがダイレクトに船に伝わり、そこそこの揺れ。最初ははしゃいでいたスペイ人たち(ちなみに動画で、タイタニックごっこをしている男性は、メディナ・シドニアの市長さんです!)も、だんだん静かになっていきます。
以前に、船は中心部分が最も揺れないと聞いていたので、とにかく中心部分で漁が始まるのを待ちます。

アルマドラバ漁は定置網の一種で、海上に網で囲いをして、その一部を開放しておき、そこに入ってきたマグロを獲るのですが、合計9艘の船で手繰りながら定置網を徐々に狭めつつ、充分に狭くなった段階で、数名のウエットスーツ姿の漁師が網の中へ入り、銛でクロマグロを突きます。狭くなった網の中をもの凄いスピードで泳ぎはじめるマグロと、銛で突かれたマグロの血で染まる海面、そして引き上げあげられる全長2メートルにもなる巨大なマグロ。引き上げられたマグロは、とにかく圧倒的な存在感です。
ぜひ、ページのトップにある動画でその迫力を感じてみてください。

ちなみに巨大なクロマグロは、「豚と同じように捨てるところがない」と言われ、マグロ漁は大きな富をもたらしてきたそうです。
メディナ・シドニア公爵がレコンキスタ後にこの地の領主となり、この恩恵を得ることになったことが、その後の大貴族としての経済基盤となったとも言われているそうです。

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その後、一匹が約200Kgにもなるクロマグロはクレーン船で引き上げられ、別の貯蔵船の氷のプールへ格納されます。

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船長によれば、「昔は一度の漁で1000匹も捕れたこともあるが、今はそんなことはないね」。
クロマグロは、特に太平洋で絶滅が危惧され、世界でも漁獲量が制限されています。大西洋でも「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」が、加盟各国の大西洋と地中海における各国の年間の漁獲量の割当の調整などを行う保護漁が行われています。ちなみにマドリードに本拠地を持つこの委員会には、日本も加盟しており、私達が漁を行った日も遠くに日本からの遠洋漁業の船が通り過ぎるのを見かました。

そういえば昔から、カナリア諸島が、日本からのマグロの遠洋漁業の補給のための寄港地となっていて、カナリアスで日本人といえばこのマグロ漁の関係者が多いと聞きます。
はるばる日本へも運ばれる天然マグロを、現地で味わってみたいと思いませんか?

ということで、次回はこのバルバテで有名なマグロ料理のレストランでのマグロづくしコースを紹介します。
お楽しみに。