旅行先の治安は重要な旅のポイントのひとつ。
マドリードの治安を心配する声は未だ根強く存在するが、実際のところはどうなのだろう?
いろいろな旅行者、滞在者のトラブルを目の当たりにしてきた在住者の目線から、マドリードの治安の現在の本当のところと、トラブルを避けるためのノウハウなどを考えてみたので、ぜひ旅の参考にして欲しい。

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マドリードでの主な被害はスリ・置き引き

個人的な経験だけで語る前に、まずは客観的でより一般的な観点から、マドリードの治安状況を検討してみるために、在マドリードの日本大使館が毎月アナウンスしているスペインでの邦人被害レポートを見てみよう。こちらを見る限りは、2015年現在のマドリードで日本人が受けた犯罪被害は、強盗や生命の危険を感じるような事件はほとんどなく、邦人の被害はスリや置き引きがほとんどだ。

2015年10月までのマドリードの被害レポートをまとめてみると、10月までの47件の被害件数中で目立つのはスリ30件、置き引き12件だ。被害の発生場所は、散策中の路上が19件、ホテルと地下鉄が各7件、次いで市内のレストランやカフェ4件、空港、駅が各2件となっている。

つまり、一件の首絞め強盗を除いては、日本大使館に報告されている範囲では暴力を伴うような強盗被害は発生していない。そういう意味では、基本的にはスリと置き引きにさえ注意していれば、マドリードは比較的安全に観光ができる街であると言える。

とはいえ、旅の最中に現金やカード類、航空券、パスポートなどの盗難にあってしまうと、せっかくの楽しい旅が台無しになってしまうので、スリや置き引きの被害に合わないように注意したいところ。
突発的な強盗などは決定的に避けることは難しいが、置き引きやスリであれば、ちょっとした注意次第でかなり被害に合う確率を減らすことができる。
ということで、マドリード観光中にスリ・置き引きの被害にあわないための注意点について、まとめてみた。
ぜひマドリード観光の際に留意して、安心して安全な旅を楽しんでもらえれば幸いだ。

大前提は荷物を手元から離さないこと

まず服装などについてだが、個人的には旅の最中だからといって、特別な格好や装備は必要ないと思っている。街を歩いていて気づくだろうが、みんなごく普通のバッグにごく普通の格好で街を歩いている。きちんとしたレストランやショップできちんとした扱いを受けたいなら、きちんとした服装であることは必要であるし、これも個人的な意見で、異論もあるだろうが、むしろポケットのいっぱいついたベストにウエストポーチ、ななめ掛けのバッグのような「これぞ観光客スタイル!」の方がかえって目立って標的にされるのではないかとも危惧している。
なので、基本的には、普段どおりのごく普通の服装とバッグでかまわないと思う。

むしろ、服装や装備よりも重要なことは、「とにかく荷物から目と手を離さないこと」だ。
具体的には、以下のような点に注意しよう。

  • バッグをおいたまま席を立たない
  • レストランの席でバッグを床に置いたり、背もたれにかけず、かならず膝の上(壁側などの人の通らない席に置くならば問題ない)
  • ショッピング中、特に試着室以外での試着の場合などにも、荷物から手を離さない
  • 支払いやチェックイン中なども、荷物をカウンターやスーツケースの上などに置かない
  • 携帯電話をテーブルの上に置きっぱなしにしない

特にこれから12月に向けて街中が込み合って混雑してくると、置き引きが増える傾向にあるので、特に荷物から手と目を離さないようにしっかり注意しよう。

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立ち止まった時には周囲に注意を

最も被害が多いスリを避けるには、大きく二つのポイントがある。
立ち止まったら、周囲に気を配ることと、カバンに注意すること。この二つだけで、スリの被害はぐっと減らせるはずだ。

歩いたり動いたりしている最中は掏る側も仕事がしにくいので、スリはほとんどの場合、立ち止まっているタイミングを狙ってくる。地図を広げて道を聞いたり、時間を聞いたりするのは、注意を引くのもあるが、歩いているカモの足を止めさせる意図もある。なので、とにかくどんな理由でも、立ち止まっている時間は無防備にならないことが重要なのだ。

地下鉄の中でのスリの被害が結構多いのは、乗車中は立ち止まっている時間が長いことも要因のひとつかもしれない。車内でおしゃべりに夢中になりすぎず、できれば壁側の位置を確保して、バッグは前に抱えて、ファスナー部分に手を置く、そして周囲に目を配ることを忘れずに。恐らくこれでほとんどの場合、スリは寄ってこない。あるいは、ちゃんと周囲を見ていれば、意味もなくなぜか近寄ってくる怪しい人の違和感にきっと気づけるはずだ。

ただでさえ日本人が数人で固まっているだけで、非常に目立つので、無防備だとターゲットにされやすい。私の経験から考えてみても、これまでスリ未遂にあった数回は、すべて日本人旅行者と数人でいた時で、しかも地下鉄内では立っている時だった。
スリに目をつけられないよう、「ちゃんと注意して周りを見てますよ」とアピールすることが大切だ。

常に緊張している必要はない。とにかく立ち止まったときに、周囲を見る、カバンを(できれば前に)抱える。
ただ、この二つに自信がないほど疲れている時は、タクシーを使うのも簡単な解決策だ。
市内の移動なら、10€以下で結構な範囲を移動できる。これで、スリの被害に合わずにすむなら安いものだ。

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特に被害が多いポイントは?

その他に、特に被害が起こりやすい場所、場面について、簡単にまとめてみる。ぜひ参考にして欲しい。

ホテル、空港、レンタカーのカウンター
支払いや手続きの間、ついついカバンをスーツケースの上やカウンターに置いて、手続きに集中してしまうが、観光客の多いホテルや空港は、スリ・置き引きの危険ゾーンだ。貴重品は必ず手元から放さないよう注意しよう。

街中で知らない人から話しかけられる
前述のように立ち止まった瞬間を狙われることがある。単に道を聞かれることも無きにしもあらずだが、立ち止まったら荷物に注意は怠らないことだ。不用意に相手の距離が近い場合は、下手にスペイン語や英語で答えようとせずに、日本語でいいので「分からない。ごめんね」といって立ち去ろう。

カフェ中にテーブルの上の携帯電話を盗まれる
実際に何度か目にした手口なのだが、カフェテリアやテラスなどにいると、何人か若者が寄ってきて、何かを書いた紙をテーブルで広げてくる。物売りか物乞いかとおもって無視していると、その紙を回収するついでに、テーブルの上の携帯電話なども一緒に盗んでいく。
携帯電話盗難の被害は大使館にはあまり報告されていないが、自分の身の回りを見ても、盗難件数は結構ありそうだ。
とにかく、まずは携帯電話などをテーブルに放置しないこと、店員以外の人がよってきたら、自分でもテーブルの上や手荷物を確認することが重要だ。

大道芸人の人だかり
ソル広場などで大道芸人の周りに人だかりができている場合がある。面白いパフォーマンスを見るのもマドリード散策の楽しみにひとつだが、混雑で立ち止まるときは、必ずバッグは身体の前&ファスナー部分をしっかり持とう。

それでも被害に遭ってしまったら?

どんなに注意していても、不運はある。まずは、被害をチェックしよう。

カード類の被害の有無をチェックし、被害があればすぐに連絡をして停止する。盗難後24時間以内に停止届けが申請されない場合は、不正使用があっても保険が適用されないので注意が必要だ。
主なカード類の連絡先は日本大使館のページを参照しよう。

次に、保険やクレジットカード等の再発行のためにも必要なので、必ず警察へ盗難届けを出す。届けは、外国人向けの被害届サービスへ電話、もしくは、直接出向く場合は、Comisaria de Centro 中央地区警察署 (C/Leganitos 19)では日本語での盗難届けサービスもあるので、被害を報告して、盗難・紛失証明書をもらおう。

パスポートの盗難・紛失の場合は、それを持って日本大使館へ行き、パスポートの代わりに「帰国のための渡航書」を発行してもらう。(詳細な手続きについてはこちら)

保険などではカバーされる場合もあるが、基本的に盗まれたものは戻ってこないうえ、何より貴重な旅の時間を事後処理に費やすことになってしまうし、何より精神的ダメージが大きい。
20年ほど前は異なるかもしれないが、少なくとも現在のマドリードは注意さえすれば、決して治安の悪い街ではない。前述のスリや置き引きに対する注意は、恐らく世界中のほとんどの都市で当たり前にするべき注意とさして変わらないはずだ。
決して過剰に恐れる必要はない。ちょっとだけ身の回りに注意して、極力被害にあわないよう努めたうえで、安心してマドリードを楽しもう。

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