毎年、「マドリードで最大のイベントでは?」と思うほどの盛り上がりを見せるマドリードのゲイ・パレード。特に2017年は「ワールドプライド」の開催都市にもなっており、これまで以上の盛り上がりを見せると予想されている。
そんな大イベントに向けて、ゲイ・プライドの起源や精神、今年の見どころ、そしてこの時期にマドリードに滞在する旅行者が注意していた方が良さそうなことなどを紹介してみよう。

プライドとは?パレードの起源と発展

ゲイ・パレードは、 現在は「プライド」、スペイン語では「オルグージョ・ゲイ(Orgullo Gay、スペイン語でゲイ・プライド)」と呼ばれており、その起源は、1969年6月28日にニューヨーク市内グリニッジ・ヴィレッジにあったゲイバー「ストーンウォール・イン(Stonewall Inn)」で発生した弾圧的な検挙とそれに対して起こった「ストーンウォール暴動」だとされてる。

この事件を契機にLGBTの権利を求める社会運動が世界に広まり、「ゲイ・プライド」運動として、6月末から7月にかけては世界各地でパレードなどが行わるようになった。

この運動は、多様性を示すレインボーカラーがシンボルとなっており、ゲイ・プライド期間中には町中のあちこちで、このレインボーカラーの旗が掲げられたり、レインボーカラーでデコレーションされているのが観られるはずだ。これらを掲げることは、自分の性的指向に関わらず「ゲイ・フレンドリーであること」も意味している。

つまり、現在は単に性的マイノリティーLGBTのための社会運動にとどまらず、「多様性を認める公平で自由な社会」を求める全ての人々の祭りとしても認知されている。




マドリードのオルグージョ・ゲイ

スペインは欧州でも比較的早い時期に同性婚を認めた国(2005年7月3日から合法化)であり、マドリードのチュエカ地区は、欧州でも最大のゲイ・コミュニティーのひとつとして知られている。ちなみに、このチュエカ地区も昔は治安の悪い地域とされていたが、LGBTの人々が集まるようになってから、クリエイティブな雰囲気の地域に生まれ変わり、現在ではオシャレなショップやバル、レストランなどが集まる活気のある地域の一つとなっている。

マドリードでは、通常時でも同性のカップルは町中でよく見かけるが、特にこのオルグージョ・ゲイの期間には、国内外から多くのLGBTの人々が集まる。ホテルや観光、飲食店など、大きな経済的効果を生み出すという側面もあるためか、この時期多くの店舗がレインボーカラーの旗を掲げたり、各企業、マドリード市役所や政党がスポンサーになるなど、多くの組織がこのイベントをサポートして、このイベントを盛り上げている。

特にクライマックスのパレードは、街全体がクラブのような盛り上がりで、セクシャリティに関わらず多くの市民が参加するため、「マドリードの最大の祭りは、サン・イシドロ祭でもセマナ・サンタでもなく、オルグージョ・ゲイ」という人もいるほどだ。

ワールドプライド・マドリード2017、見どころは?

今年はマドリードのプライドは、2000年から数年おきに開催されているワールドプライドといわれる世界規模にスケールアップしたイベントに指定されている。そのため、ヨーロッパプライドの会場都市となった2007年以上の人出が予想されている。
主な見どころを簡単に紹介してみよう。

ハイヒール競走

6月29日18時から、Pelayo通りにて、今年で第二十回目のCarrera de Tacones(ハイヒール競走)が開催され、ハイヒールを履いた男性が全力疾走で通りを駆け抜けるという毎年恒例の人気イベントが行われる。
すでに参加者登録はクローズしてしまっているが、今年は優勝賞金が1000ユーロ以上という話もあるので、盛り上がること間違いなしだ。

市内ステージ

ステージが設置される会場は以下の5カ所。期間中の夜20時頃からステージでコンサートなどが実施される。

  • Plaza de Pedro Zerolo (プラサ・デ・ペドロ・セロロ) 6月28日19時半から / 6月29日から7月1日まで 20時から
  • Plaza del Rey(プラサ・デル・レイ) 6月28日から7月2日まで 20時から
  • Plaza de España (プラサ・デ・エスパーニャ) 6月29日から7月1日まで 20時から
  • Puerta del Sol (プエルタ・デル・ソル) 6月28日から7月1日まで 20時から
  • Puerta de Alcalá (プエルタ・デ・アルカラ) 6月30日 20時から / 7月1-2日 22時から




新会場マドリード・リオ

期間:6月28日 20時から0時 / 6月29日から7月2日 12時から22時 
今回、新たにマドリード・リオのPuente del Rey(プエンテ・デル・レイ)に会場が設けられ、ステージやスタンド展示、フードトラック、キッズ・ファミリー向けのゲームやワークショップなどのアクティビティが実施される。

クライマックスのゲイ・パレード

オルグージョ・ゲイの最大の盛り上がりは、やはりなんといっても7月1日17:30から行われるパレードだろう。アトーチャ駅を出発し、コロン広場までを、多くの参加者や団体がパレードする。特に夜が近づくにつれ、DJや華やかに着飾ったLGBTのダンサーやパフォーマーたちが登場し、街全体がクラブのような盛り上がりを見せる。
今年は特にワールドプライドとなっているため、200万人以上の人出が予想されており、世界最大規模のプライド・パレードになるはずだ。
パレードの終着点であるコロン広場には特設ステージが設置され、DJやパレードの参加者らが祭りを盛り上げる。

その他の詳細なプログラムについては、公式サイトへ。

オルグージョ期間中のマドリードはここに注意!

以上が、マドリードの今年のゲイ・プライドの大まかなプログラムだが、この期間中にマドリードを訪れる人は注意した方が良さそうなことについても、追記したいと思う。

まずは、最も注意が必要なのは、パレードが行われる7月1日土曜日の午後から夜にかけてだろう。パレードの最中はアトーチャ駅からコロン広場までの通りは通行止めになる。さらにまだ発表はされていないが、恐らくメトロの駅も、パレードのルートになっているアトーチャ駅、バンコ・デ・エスパーニャ駅、コロン駅などは、パレード中は使用不可になる可能性がある。

参考:ワールドプライド2017、マドリード市内の交通情報

また、このパレードのルートは、プラド美術館、ティッセン・ボルネミッサ美術館、レイナ・ソフィア美術館というマドリードの三大美術館の通りに面している。車やバス、メトロが使えない、徒歩であっても、道を簡単に横切れないなどの問題で、これらの美術館への訪問が困難になる可能性がある。この日に美術館の見学を予定している人は、できるだけ昼前までに済ませておく方が無難そうだ。

また、市内ステージが設置される5つの広場に付近は、深夜0時頃までコンサートなどが行われる。勿論、コンサートを楽しみたい人にとっては問題ないが、そうでない人はできるだけその近くの宿は避けた方が無難そうだ。
特に7月1日の夜はチュエカ一帯は人が入れないほどの混雑と朝までのパーティーが予想されるため、夜はゆっくり休みたい人は、にぎやかなエリアからは少し離れたところに宿を取ることをお勧めする。

パレードの日は特に、華々しく着飾ったドラッグクイーンやユニークな扮装の人々が多くマドリードの町中に溢れて、この最大の祭典を祝う。基本的にはハッピーなお祭りなので、チャンスがあれば、ぜひ一緒に楽しんで欲しい。
ドラッグクイーンのお姐様方派は「写真を撮っていいですか?」と言うと大抵喜んでポーズを決めてくれるので、一言断って撮ってから撮影しよう。パレードの頃は例年、非常に暑いので、充分な暑さ対策&水分補給はお忘れなく。