マドリードのムルシア料理店 El Caldero(エル・カルデーロ)については、以前にも本ウェブサイトでも紹介したことがあるが、Twitterなどでも予告していたように、マドリード在住の各国ブロガーと共にムルシア料理のプレゼンテーションに招待していただいた。
未だ知られざるムルシアの食について、徹底レポートしてみたいと思う。。
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知られざる地中海の美食ムルシア料理
地中海に面したスペインの都市といえば、バルセロナ、バレンシアなどをまずは思いつく。これらの都市といえば、スペインのガストロノミーの地位を世界的に押し上げたフェラン・アドリアらの革新的な料理や、勿論パエリアやカルソッツなど、世界的にも知られる郷土料理をいくつも思い浮かべることができる。ところが、日本人にとっては「ムルシア料理」と聞いてもピンと来ない人も多いだろう。
スペイン国内でも、カルタヘナなどリゾート地として知られている街はあるものの、さほどメジャーな地域とは言いがたい。
ところが、今回、ムルシアのグルメを体験させてもらい、その認識を新たにした。
ムルシアへ毎週ワゴン車を走らせ現地の食材を買い求め、マドリードで現地ムルシアの味をそのまま楽しませてくれるレストラン El Calderoは、知られざる地中海グルメの宝庫だった。何より、野菜、魚介、米料理とくれば、日本人の嗜好にも合致する。
さっそく、実際に試食したおすすめのムルシア料理を紹介していこうと思う。レストラン訪問の際に、参考にして欲しい。
マグロの生ハム、モハマやカラスミなどムルシア産珍味の盛り合わせ
ビール好き、ワイン好きであれば、ぜひこの一皿と白ワインから食事をスタートして欲しい。
Surtido Muricianoは、モハマ(マグロの生ハム)、マルーカというタラの一種のカラスミ、カツオのジャーキー、モルコン(ソーセージ)、チョリソ、マルコナ種のアーモンドのマルシアの名産品の盛り合わせた一皿だ。
冷えたムルシアのビールEstrella Levante(エストレージャ・レバンテ)か、白ワインが合うだろう。おすすめのムルシアワインについては、本記事の最後にまとめているのでそちらを参照して欲しい。
野菜の前菜ならこの二皿
上記の盛り合わせは塩漬けが多いので、酒に合わせるには最高だが、もう少しマイルドに食事をスタートさせたい人に勧めたいのは、野菜をメインにしたこの二皿。
El Calderoでは、上述の通り、毎週木曜日にムルシアからあらゆる食材が届く。中でも新鮮なムルシア産野菜はぜひチェックしておきたい。
Ensalada Murciana (ムルシア風サラダ)は、湯剝きのトマト、ツナ、ゆで卵にオリーブオイルと塩というシンプルな味付けをした後に、しばらく冷やしてサーブされる。
Zarangollo(サランゴージョ)もムルシア料理のひとつで、ズッキーニと卵の炒め物だ。全般的に塩味の強めのスペイン料理が多いが、優しい滋味あふれる味付けなのは、素材に自信があるがゆえだ。トッピングされているガンバ・ロハ(赤海老)も新鮮でプリプリの食感を楽しめる。
前述のSurdioとこの野菜に二皿のうちのどちらか、あるいは人数によっては三皿全てをスターターとして注文すると良いだろう。
ムルシアといえばタコのグリル
スペインのタコ料理と言えば、茹でたタコに岩塩とパプリカ、オリーブオイルをかけたタコのガリシア風が有名だが、ムルシアのタコ料理はグリルしてあり、香ばしい香りとカリっとした食感を楽しむことが出きると、知る人ぞ知る美味しいタコ料理だ。
El CalderoのPulpo Asado(タコのグリル)は、付け合わせのマッシュポテトもお勧めだ。
名物の米料理アロース・カルデーロ
アロース・カルデーロは、ムルシア地方の漁師達の米料理だ。
岩場など足下が安定しない場所でも調理ができるよう、三脚に鍋を吊るして魚介スープで米を煮るシンプルな料理で、この鍋をCaldero(カルデーロ)と呼び、このレストランの名前の由来にもなっている看板料理だ。
El Calderoでは、この三脚ごと鍋をテーブルまで運びサーブしてくれ、二人前から注文が可能だ。
印象としては、アロース・カルドーソ(スープ雑炊)ほどひたひたのスープではなく、パエリアほどには米はパラパラしていない。ちょうどその中間くらいにスープが米に残るしっとりさ加減で、かつアルデンテ程度の米の食感を残した状態に仕上げられている。
一番のお勧めポイントは、基本的にはスープのみで米を煮ているため、魚介系のパエリアにありがちな魚介の塩分が強く残ることもなく、魚介の旨みは十分に濃厚でありつつも塩味がマイルドで、日本人には食べやすい味だということだ。これはありがたい話で、塩味のきつくないパエリアを見つけるのは、実はとても難しい。ここのアロース・カルデーロは、日本人にもお勧めできる米料理だ。
今回は、別に調理されたBesugo(鯛)をお好みで米に載せていただくスタイルで楽しませてもらった。そのままでも十分楽しめるが、鯛の味と一緒にサーブされる3種のアリオリソースで、味の変化を楽しもう。
デザートのイチオシはレモンの葉のお菓子パパラホテ
ここまでで十分に満腹になってしまうが、デザートの入る余地はぜひ残しておこう。
一番のお勧めは、ムルシアのお菓子パパラホテだ。レモンの葉に小麦と卵の記事をつけて揚げたもので、仕上げはテーブルでリキュールをかけてクランベしてくれる。
食べるときは、レモンの葉を引き抜いてからいただこう。レモンの葉の風味が移ったパパラホテは、甘さも控えめで食べやすい爽やかなデザートだ。
その他にも、甘い珈琲をデザート代わりにという人には、Café Asiatica、アジアン・コーヒーと名づけられたコーヒーも試してみると良いだろう。
コンデスミルク、エスプレッソコーヒー&ブランデー、ミルクフォームにシナモンパウダーがかかっている。コーヒーにブランデーなどのリキュールを入れるスペインのカラヒージョと、コンデスミルクを入れるベトナム風コーヒーをミックスしたような飲み物だ。
コンデスミルクのおかげで非常に甘く、かつしっかりとブランデーが入っているので、甘党かつ酒好きにはお勧めだ。
食後酒派はこちら
デザートを楽しむ人も、デザートはスキップした人も、スペイン式の食事の締めくくりにはぜひ食後酒にチャレンジしよう。
アルコールに弱い人はお勧めできないが、スペインをはじめとしたヨーロッパでは、消化を助ける食後酒を食後にいただく習慣がある。強いアルコールで胃を刺激して、消化を促すことができると言われている。
スペインでは、葡萄の蒸留酒オルホや、スピノサスモモの実を漬け込んだパチャラン、ハーブを漬け込んだイエルバなどが食後酒として一般的だが、お勧めはモスカテル(マスカット)だ。すっきりとした甘みがあって飲みやすい。チュピートと呼ばれる小さなショットグラスでいただこう。
より強いリキュールもいける人には、ムルシア産のラム酒もいいだろう。オレンジの皮を香り付けに入れてもらうのがお勧めだ。
爽やかなオレンジとラムの風味をゆっくりと楽しもう。
ムルシア料理はぜひムルシア産ワインで
最後にワインについて触れておこう。
ムルシア料理レストランEl Calderoでは、勿論ムルシア産のワインを楽しむことができる。
ムルシア地方のワインの産地呼称地区は、D.O. Bullas(D.O. ブリャス)、D.O. Jumilla(フミージャ)、D.O. Yecla(イエクラ)の三箇所。
夏は気温が高く、冬は氷点下まで冷え込む激しい寒暖の差と、少ない降水量と水はけの良い土地、乾燥した空気、そしてスペイン南部の太陽は、ぶどうの生育地としては非常に適しており、ムルシアは最近、スペインでも注目を集める産地のひとつだ。
今回は、以下の通り、白・赤それぞれ一本ずつを試してみたが、確かに高いポテンシャルを感じさせてくれる。そして、やはり現地の食材をつかった伝統の料理とくれば、やはりその地方のワインが合わせるのがお勧めだ。
白ワイン
Sara Valero de Bodega Barahonda (D.O. Yecla)
マリアージュ:モハマ・カラスミなど、ムルシア風サラダ、アロース・カルデーロ
赤ワイン
Antonio Valero de Casa Castillo (D.O. Jumilla)
マリアージュ:サランゴージョ、タコのグリル
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Calle Huertas, 15
http://elcaldero.com/
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