スペインの各都市で教会を見学する場合、多くの場合はカテドラル(大聖堂)を見どころとして薦められる場合が多い。
マドリードのカテドラルは、王宮の隣にあるアルムデナ大聖堂なのだが、個人的には、特に教会内部の見学に関して言うならば、マドリードで多くの人にぜひ見学してみて欲しいのは、実はサン・フランシスコ・エル・グランデ教会だ。

王宮の前からバイレン通りを進むと右手に見えてくるその教会は、1761年から1784年にかけて建築されたネオクラシック様式の建築で、内部に入ると、天井画に覆われた大きなドーム、主祭壇や6つの礼拝堂、そして、訪問した我々をぐるりと取り囲むように配置された十二使徒の大理石の彫刻は圧倒的な美しさだ。ゴヤやスルバランの絵画のコレクションも見逃せない。
今回は、そのサン・フランシスコ・エル・グランデ教会を紹介しよう。

教会の見学はガイドツアーで楽しもう

ミサの最中も入場はできるが、教会内部をじっくり見学するためには、やはりガイドツアーで見学することを薦めたい。その時間の入場には3€が必要で、ガイド説明はスペイン語のみではあるが、説明の最中は普段は明かりが灯されない6つの礼拝堂も点灯され、明るい中でじっくりと鑑賞できるし、主祭壇もミサの邪魔をせずに近くから見学できる。また、ミサの最中には入ることができない、多くの絵画が展示された廻廊やサロンなどへもガイドと一緒に入ることができる。

見学の時間中は、礼拝堂→主祭壇→廻廊・サロン→礼拝堂とガイドが繰り返し説明しているので、ガイドが説明している場所から自分の見学をスタートしよう。(内部に入って、ガイドと見学者たちが見当たらない場合は、奥の廻廊部分に入っているので、しばらく待っていれば出てくるはずだ。)
ガイドの説明はスペイン語のみだが、説明するスポットは照明が点灯されるので、スペイン語が分からない場合でもガイドツアーについていくのがよいだろう。
ちなみにフラッシュなしであれば、カメラでの撮影は可能だ。

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起源は聖フランシスコの礼拝堂

サン・フランシスコ・エル・グランデ教会は、その名からも分かるように、13世紀のイタリアでアッシジの聖フランシスコが創設したフランシスコ修道会の教会で、聖フランシスコがサンティアゴ巡礼のために立ち寄ったマドリードで、1217年に建てた礼拝堂がこの教会の起源となっている。1561年にフェリペ2世がマドリードを首都に定めると、修道院の重要性が高まり、軍隊の駐留などにも使われたこともあった。ちなみに、1614年にマドリードに到着した支倉常長に宿舎としてあてられたのが、この修道院だったと言われている。

現在の建築は、1761年からフランシスコ・デ・ラス・カベサスによる建築が始まり、1768年以降はアントニオ・ポロが後を引き継いだ。そして、外観の装飾を含めて、イタリア人建築家で、カルロス3世時代にマドリードの多くの建築を担当したフランシスコ・サバティーニが、この教会を完成させた。

サン・フランシスコ・エル・グランデ教会のクーポラ(ドーム)は、直径33m、床からの高さスペインで最大、そしてヨーロッパ内ではバチカンのサン・ピエトロ、ローマのパンテオン、フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレに続く四番目に大きいと言われている。

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ゴヤの絵画のある礼拝堂

教会内部には6つの礼拝堂があり、それぞれに見ごたえがあるが、その中でも最も重要な価値があるといわれているのは、主祭壇へ向かって左の礼拝堂のひとつに、ゴヤの「アラゴン王アルフォンソ5世の前で説教するシエナのサン・ベルナルディーノ」が飾られている。
この絵は、ゴヤが宮廷画家になる前の1781-1783年、まだ王立タペストリー工場の下絵書きの仕事をしている時代に描かれた。当時のゴヤは、タペストリーの下絵作家としては名を知られた存在であったが、ジブラルタル包囲戦などの影響から下絵の仕事は減っており、個人的な作品製作に重点を移し始めていた。
ちなみに、ゴヤは当初アラゴン王アルフォンソ5世を描いたのか、ナポリ王レナート1世を描いたのか明言していなかったが、カルロス3世の好みにあわせ、アルフォンソ5世ということにしたようだ。登場人物をピラミッド型に配置するドラマチックな構図を用いたこの作品は、同じ時期に描かれたプラド美術館所蔵の「磔刑のキリスト」と同じく、ゴヤの宗教画の頂点とも言われている。

ちなみに絵の中には若き日のゴヤ自身の自画像も描かれている。右端の赤いケープの後ろの黄色のベストの男がそれだ。

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Basílica de San Francisco el Grande

住所:Plaza de San Francisco, s/n, Madrid
最寄駅:Metro La Latina, Puerta del Toledo
入場料:3€、学生は2€

ガイドツアー時間
火-金:10:30-12:30, 16:00-18:00
土  :10:30-12:30, 16:00-18:00

7月・8月
火-日:10:30-12:30, 17:00-19:00
※宗教儀式が行われていない場合に限る