日本人旅行者が、特に気をつけたいスペインのマナーとは?
日本とスペインの常識的なマナーには、どのような違いがあるのだろうか?
一般的に「日本人は礼儀正しい」と言われるし、実際にいろいろな国の人からもそのように言われるものの、スペインで日本人旅行者に遭遇すると、実際には「あれ?あまりマナーが良くないかも」と思うことも結構ある。
その差異はなぜ生じているのだろう少し考えてみたところ、やはりそこにあるのは、日本とスペインのマナーの違いなのかもしれない、ということに思い至った。悪気はないし、むしろ礼儀正しくあろうとしているのに、日本とスペインの礼儀に対する認識の違いから、「何かおかしな人だなあ」と怪訝な顔をされてしまったり、逆に日本人側が、「スペイン人はまったく礼儀がなっていない!」とか、「外国人だからといって軽んじられている!」と思ってしまう不幸な行き違いも時々みかけなくもない。
「郷に入っては郷に従え」という言葉もある通り、現地の常識を理解し、滞在中少し受け入れてみるだけでも、スペインでの旅がより快適になったり、二つの国の習慣の違いを楽しめたりする。
ということで、今回は私が考える「スペイン旅行で知っておくと便利なスペインのマナー」について、いくつか紹介したいと思う。
レストランやショップで挨拶を返す
個人的に、日本人旅行者のマナーで最も気になるのは、レストランやショップで、店員に挨拶をされても挨拶を返さないことだ。バルやレストラン、ホテルなど、公共の場所に入ったときに、挨拶をしない、相手が挨拶しても挨拶を返さない日本人は思いのほか多く、その態度に困惑するスペイン人スタッフもよく見かける。
勿論、私も日本生まれ日本育ちの日本人なので、その理由はよく理解しているつもりだ。
日本のショップなどでは、過剰に感じるほど「いらっしゃいませ!」と連呼するものの、実は客側は必ずしも挨拶を返す必要はない。それで、レストランやショップに入ったときに、客側が挨拶をする習慣がないのだ。
一方で、スペインでは(おそらく他の欧米の国と同様に)、挨拶をされて返さないことは大きな違和感を生じさせる。挨拶を無視された人は、相手がとんでもなく無礼なのか、あるいは何か悪意か敵意があるのかと思ってしまうかもしれない。
「お客様は神様だ」は日本国内限定の考え方で、スペインでは、店員と客はサービスと金銭を交換する対等な人間同士と考える。そして人間同士なので、きちんとしたサービスを受けたければ、客側にもそれなりの対応と相手へのリスペクトが求められる。
とはいえ、それほど難しいことは必要ない。お店やバル、レストランなどに入ったら、まずは、店員の目を見て「オラ!(どうも!)」と言えば、それだけで気持ちを十分伝えることができる。
スペイン語に慣れていなくてとっさに出てこなければ、英語で「ハロー」でも、日本語で「こんにちは」でも十分に伝わると思う。できれば、にこやかに相手の目を見て挨拶をすることができれば、たいていの場合は相手もきちんと対応してくれる。
鼻をすすらない
これもスペインに限らないかもしれないが、鼻をすすることに嫌悪感を持つ人は多い。日本人はどうしても、公共の場でおおっぴらに鼻をかむことに抵抗感を持ってしまうが、鼻炎やアレルギーがあって、鼻をすすることが癖になっている人は特に注意しよう。鼻をかまずに、すすり続けることで、相手に嫌な思いをさせるかもしれない。
公共の場で靴を脱がない
移動中の電車や飛行機、ちょっと一休みしたホテルのロビーで、ついついちょっとだけ靴を脱いでくつろぎたい、と思ってしまう人もいるかもしれないが、これも嫌がるスペイン人は多い。
ナプキンの使い方あれこれ
スペインでは、カジュアルなレストランやバルならば紙ナプキン、そうでなければ布のナプキンが必ずテーブルに置かれていて、食事の際に唇が汚れるとこれで拭う。
日本ではナプキンで頻繁に口を拭う習慣があまり一般的ではなく、つい唇をぺろりとなめてしまったりするが、これもスペインではマナー違反なので注意しよう。使い慣れるとナプキンはかなり便利だ。
使い終わった紙ナプキンは、バルによっては床に捨てることもあるが、これは場合による。くず籠がある場合は、そちらに捨てよう。他の人も床に捨てているようなら、床に捨てるのはマナー違反にはならない。
レストランで布ナプキンが出された場合は、食事の始まるタイミングで半分に折ってひざの上に広げ、食事の最中に口を拭うときは、二つに折った内側を使う。トイレなどで中座する場合は、椅子の上に置いておこう。また食事の後は、綺麗にたたまずにぐしゃりとさせてテーブルの上に置く。食後にナプキンを綺麗にたたむのは、「食事がまずかった」のサインだといわれている。
女性のお酌は避けたほうが良い
スペインのバルやレストランでは、そこまで神経質なテーブルマナーは気にする必要がないと思うが、できれば女性が男性にワインをお酌するのは避けたほうがよいと思う。これに関しては、自分たちのテーブル内のことだし、周りをさほど気にする必要もないかもしれないが、女性にお酌をさせるのを周囲が見たら、男性が恥をかくかもしれない。
高級なレストランでは、ワインを注ぐのはカマレロ(ウエイター)の仕事なので、任せてしまって問題ない。
大切なのは気持ちを伝えること
スペイン旅行で日本人が気をつけたほうが良いマナーについて、代表的なところを紹介したが、細かな礼儀の違いはいくらでもある。少しだけでも知っていれば、落ち着いて対応できるし、繰り返していくことで自然にマナーが身に付き、より快適に過ごせることは確かだが、あまり細かなルールにとらわれすぎる必要もない。それよりも、礼儀作法で最も大切なのは、相手に対しての思いやりだ。
日本とスペインのマナーに多少のずれがあったとしても、「悪意がない」と分かってもらえれば、相手もこちらが異なる文化的背景を持っている日本人であることは理解しているので、ほほえましく、もしくは苦笑とともに受け止めてもらえることもある。そのためにも、にっこり笑って相手の目をみること、スペイン語が難しいならば英語でも日本語でもいいので、「こんにちは」や「ありがとう」を伝えること、そして、何より自分自身がその場を楽しんでいることを表現することが大切かもしれない。
ぜひこれからスペインを旅行する人は参考にしてみて欲しい。
スペインのレストランでのマナーや違いについては、「スペインのレストランのマナーと知っておくと便利なポイント」もどうぞ。
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※ちなみにトップの写真は、グラナダのアルハンブラの庭園で思索する「アルハンブラ物語」の作者 W.アーヴィングの図。マナーもマドリードも関係ないけど、「紳士っぽい写真」ということで…。
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