スペインの日本料理界の草分け的存在のペドロ・エスピーナ氏のレストラン「添 Soy – Pedro Espina」は、最近増えてきた日本料理店や日本の懐石スタイルに影響を受けた創作レストランと一線を画すクオリティで、知る人ぞしる隠れ家的名店だ。

今回は、ぜひこのレストランを紹介しようと思う。

スペイン人板前の草分けペドロ・エスピーナ氏

ペドロ・エスピーナ氏は、その昔マドリードにあったという日本料理店「サントリー」で日本料理の料理人のキャリアをスタートし、その後、日本料理レストランTsunamiの開業を経て、2008年にチャンベリ地区にレストラン「添 Soy」をオープンする。

一方で、ペドロ氏はレストランのオーナーシェフを務めるほかにも、スペイン人初の板前として、スペインで日本料理を学ぶ料理人たちにも指導を続けてきた。

その功績は大きく、2017年には、日本の農林水産省がスペインにおける日本の食文化普及の貢献した個人や団体を表彰するTaste of Japan Honorary Awardのスペイン人料理人部門を受賞した。

貫かれた日本料理の哲学

今や、日本の懐石料理は、世界中の料理界に影響を与えている。勿論、スペインもその例外ではなく、伝説的レストランエル・ブジの後継者たちも、日本料理の素材やスタイルなどの要素を積極的に取り入れている。

今のスペインでは、料理をアートと捉えて、さまざまな異文化を取り入れることで、オリジナルな自己表現を試みるスターシェフも多く、挑戦的でクリエイティブなスタイルで美食家たちの注目を集め、「予約のとれないレストラン」としてメディアで紹介されるが、ここで出てくる「日本っぽい要素」は、日本人としては、ちょっと苦笑してしまうことも実はある。

価格も決してお手頃とは言い難いので、そんなに通い詰めているわけではないが、ごくたまにそのようなレストランで体験してみて改めて感じたのは、「日本料理の神髄とは、その表面的なスタイルだけで模倣できるものではない」ということだ。

日本料理の繊細さや洗練度は、その丁寧な食材選びと手間を惜しまない丁寧な処理、そして何より、命を扱うという神聖な行為として食材に向かう心構え、この食材が調理場に届くまでにかかわった多くの生産者と、先人たちが積み重ねてきた技術へのリスペクト、それらをすべて一皿一皿に込めて、一期一会の客の前に届ける。そういった精神性と、真摯な技術の追求にこそ宿る。

ありがたいことに、日本の食文化について語るスペイン人も増えた。
しかし、その精神性を理解する本物の日本料理の料理人は、まだまだ多いとは言えない。

話は長くなったが、私が知る限り、ペドロ氏は間違いなく、その日本料理の精神性を理解するスペイン人料理人の一人だろう。

チャンベリのイグレシア駅近く、看板をかかげない、まさに知る人ぞ知る隠れ家レストランで、コースを試食させていただいた。

 

コースの始まりは、乳化したソースを使った見た目も華やかな酢の物。絶妙な蒸し加減のムール貝がスペインらしい。
寿司や日本食がずいぶん受け入れられるようになったスペインでも、未だに生の魚介を敬遠するスペイン人もいるようだが、このホタテを食べて、生のホタテが好きになるスペイン人客も多いそうだ。

個人的には、もっともインパクトがあったイソギンチャクの冷製茶碗蒸し。
滑らかな食感のイソギンチャクの茶碗蒸しと、心地よい甘味ととろみのある自家製の海苔の佃煮風のペースト。異なる磯の風味、甘味、食感が楽しめる。


マグロのタルタル。

海老と鶏の入った土瓶蒸しをお吸い物代わりに、握り寿司と巻き寿司

 


揚げ物は海老しんじょのはさみ揚げ。
こちらも海老の食感もパリパリの揚げ具合も完璧。

フォアグラ照り焼き。


デザートはアイスクリームの天ぷら。


Mochi de Soy。こちらは持ち帰りメニュー用に開発した新デザートだそう。

通常のDegustaciónのコースは65€で、

突き出し
シェフのサラダ
マグロのタルタル
土瓶蒸し
握り寿司
巻き寿司
えびしんじょうの茄子のはさみ揚げ
フォアグラ照り焼き
アイスクリームの天ぷら

ドリンク別。

添 Soy de Pedro Espina

住所:Calle de Viriato 58 Madrid 28010
電話:914457447
※要予約

現在、持ち帰りも対応中
持ち帰りメニュー

Web: https://soypedroespina.com/
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