2018年の夏、日本は連日猛暑のニュースが届いているが、幸いにして今のところマドリードは例年に比べると比較的穏やかな気温が続いている。ただ、これからまだ気温が上がる可能性があるうえ、日本の暑さとは異なるので旅の最中に体調を崩してしまう危険性もある。
そこまでいかずとも、夜遅いスペインの夕食時間に疲れ切った顔でレストランに現れる観光客の姿もちらほら。
せっかくのスペイン旅行の機会を、無理せず楽しみたい。
そんな皆さんのために、これまでの経験を交えて、暑い夏の時期のマドリードの観光の楽しみ方についてまとめてみようと思う。
熱波情報に注意
マドリードは北緯でいえば、秋田県や岩手県と同程度で、しかもイベリア半島中央部のメセタと呼ばれる乾燥高原に位置するため、標高は655メートルもある。一般的に乾燥している状態では、100メートルごとに気温はおよそ1℃下がると言われているので、海抜ゼロの都市よりもさらに6℃以上も気温が下がる計算になる。
ということで、夏の間、昼間は強い日差しが照り、場合によっては気温は30℃台まで上がるものの、乾燥も手伝ってか日陰は涼しく過ごしやすく、むしろ夜は肌寒くさえ感じることもあるので、「マドリードは暑い」というイメージに反して驚く観光客も多い。なので、一般家庭では冷房もない家も多い。
なので、できるだけ日陰を選んで歩く、強い日差しに対応するためサングラスや帽子を利用するなどのちょっとの工夫で、夏の間でも比較的過ごしやすい。
しかし、熱波が到達した場合だけは、話は別だ。アフリカから高温の気流が夏の間に何度か到達することがあり、いったん熱波に襲われると、気温は40℃まで上昇し、特に午後になると地面からの輻射熱で日陰でもすさまじく暑いし、夜になっても気温が下がらないことがある。そして、熱波が去るまでの数日間は、このような猛暑が続く。基本的には数日すれば暑さは去り、またもとに戻るはずだが、年によっては熱波が連続して到達し、結局一か月近く続いたこともある。
自然の天候には逆らえないので、こればかりはどうしようもない。
ともかく、旅の前、最中には、天気予報をチェックすることが重要だ。ちなみにスペイン語で熱波は、「Ola de Calor(オラ・デ・カロール)」と言い、文字通り「熱の波」という意味だが、スペイン旅行中は現地のテレビニュースや新聞でこの言葉が出ている場合は十分に注意して、旅のスケジュールを立てよう。
夏の一日のスケジュールの秘訣は、シエスタと夕涼み
「熱波に注意」とニュースで言われても、具体的にどのように注意すればいいのだろう?日本でも熱中症で倒れる人が多いが、旅先ではただでさえ、あれもこれもと予定を詰め込んでしまいがちだし、時差もあるので疲れが出やすい。そのため、特に気温が上がる夏には、一日の過ごし方や時間配分が大切になってくる。
計画を立てる上で、最も注意すべきなのは、スペインの一日の時間感覚は日本や他の国と大きくことなることだ。夏の間のスペインは日没が非常に遅く、夜の22時頃にようやく暗くなる。そして、マドリードの場合、気温が最も高いのは16時から18時頃。加えて、これは夏に限ったことではないが、レストランの食事の時間が、昼は14時から16時、夜は20時以降と、日本と比べるととても遅いことにも注意が必要だ。
まずは、市街地の散策などの屋外で過ごす場合は、できれば気温がまだ低めの午前中を中心に行いたい。14時から昼食が終わって、18時くらいまでが一日で最も気温が高い時間帯になる。この時間は、美術館やショッピングなど涼しい屋内で過ごすか、あるいは思い切って1時間くらいは涼しいホテルの部屋でシエスタ(昼寝)をするのもおすすめだ。
というのも、マドリードの夏は日が暮れる時間が非常に遅く、夜の22時くらいにようやく暗くなる。つまり、日本の感覚で言えば「日中」が非常に長いのだ。
そして、気温も下がり過ごしやすくなる20時以降は、地元の人々も外で過ごすので通りも賑やかになり、「これぞマドリードの夏」という雰囲気になってくる。これを楽しまない手はない。
そのように遅いマドリードの夜を楽しむためにも、午後に一度「シエスタ(昼寝)」をしておくことをお勧めしたい。一時間だけでも横になっておけば、疲れもとれて、夜はまた元気にマドリードを楽しむことができる。
マドリードの夏の夜に、ライトアップされた王宮や多くの人々でにぎわうマジョール広場を散策したり、バルのテラス席で冷えたワインでタパスを楽しんだりする。これは、夏ならではの楽しみ方だ。
夜の治安を不安に思う人もいるかもしれないが、実は夏の間は、暑い昼間の方が人通りが少なく、もしかしたら危険を感じるくらいだ。逆に夜は、多くの地元民たちが家から出てくるので、よほどの通りに入り込まない限りは、さほど心配せずに楽しめるはずだ。(ただし、通常通りの置き引きなどへの注意は必要。詳しくは、こちらの「マドリードの治安、最新情報とその対策」へ)
ちなみに、AirBnBなどで民泊をする人は、朝でかける前にペルシアーナと呼ばれる鎧戸を閉め、カーテンを閉めておくことをお勧めする。スペインの建物は、厚い石造りでできているため、外気を遮断しておけば、日中もかなり涼しく過ごすことができる。間違っても、「暑いから窓を開ける」ことのないように注意しよう。熱風が入ってくるだけだ。
これらを踏まえると、夏季の旅では、以下のようなスケジューリングを基本とすることを薦めたい。
夏のマドリード観光のスケジューリング
- 市街地や史跡の散策など、屋外を観光する場合には基本的には極力午前中に行う
- スペイン式の遅めの昼食の後は、気温が高くなる時間なので、観光をする場合には美術館など屋内を中心に
- 午後は一度ホテルに戻って、涼しいホテルの部屋で1時間ほどシエスタ(昼寝)をとって夜に備える
- 夜20時過ぎくらいから、通りにも人があふれて賑やかになるため、広場やバルのテラスで軽めにつまみながら、夏の夜を楽しむ
参考までに、屋内の観光のおすすめを以下にいくつか挙げておく。
- お得なフリーパスカードでマドリードの美術館を満喫しよう
- セラルボ美術館 珠玉の邸宅美術館を堪能しよう(15時で閉館)
- 光の画家ソローリャのアトリエへ、ソローリャ美術館(平日は20時まで)
- ロマン派美術館で19世紀の優雅な貴族たちの生活を垣間見よう(夏季平日は20:30まで)
- マドリードで最も美しい教会、サン・フランシスコ・エル・グランデ教会を見に行こう(夏季平日午後は17-19時)
- 考古学、歴史、美術好きなら必見。スペイン国立考古学博物館(平日は20時まで)
レストラン・ショップへの営業時間の確認
特に8月の旅で気を付けなければならないのは、レストランやショップも夏季休暇に入るお店が多いことだ。
いつ、どのくらいの期間に夏季休暇を取るかも、お店によって毎年ことなるので、行きたいレストランがある場合は、事前に電話で確認して予約をしておくのが無難だ。電話が難しい場合、お店のFacebookなどで告知されている場合も多いので、そちらを確認してみるのもいいだろう。
SNSもないレストランの場合は、ホテルのフロントに電話での予約を依頼するのもいいかもしれない。
また、ショップの場合も、夏季休暇や夏季の短縮時間での営業の場合もあるので、要注意だ。
しかし一方で、7月からはバーゲンセールが始まるので、お得な価格でのショッピングが楽しめる時期でもある。最近はバーゲンの開始時期も早まっているので、8月に入るとめぼしい人気商品は売り切れてしまう可能性が高いが、それでも残っている商品はかなり値段が下がるし、秋物の新作もすでに出始めるので、掘り出し物に出会える可能性もありそうだ。
マドリードの夏イベント
バケーションで閉まってしまうレストランやショップがあるのは残念だが、一方で夏ならではの楽しみもある。
マドリードでは、8月前半は下町地区での夏祭りが続く。
マドリードの8月は下町地区でのお祭りが続きます。https://t.co/EzDG135QUb
ラストロ地区のサン・カジェターノ祭り(8月2-8日)、ラパピエス地区のサン・ロレンソ祭り(9-11日)、ラ・ラティーナ地区のラ・パロマ祭り(12-15日)。
ぜひ楽しんでみてください。https://t.co/UdGbDCoWmh— TapasMadrid (@TapasMadrid) 2018年7月27日
また、夏のマドリードでは、市が主催する「ベラーノ・デ・ラ・ビジャ(Verano de la villa)」という一連の音楽イベントが行われ、野外コンサートなども多い。
8月8日21時からのレティーロ公演での野外コンサートや、25日20時からの王宮前でのダンスイベント BAILE EN LA CALLE など、様々なイベントが行われている。
ということで、夏ならではのマドリードを、日差しと暑さにまけることなく、ぜひ楽しんでほしい。
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